SDMの実践:
がん検診でSDMをどのように行うか
3. SDM推進のための研修や支援
英国NHSによるSDMガイドでは、SDMを推進するために、患者(受診者)、支援体制、医療者、供給体制の4つの視点からの整備が必要としている1)。
がん検診におけるSDMを実現していくには、SDMについての啓発を浸透させるとともに、継続的な支援体制の構築が必要である。本研究班ではがん検診やSDMの基本的概念に関する講義とともに、検診の事例をベースとした情報提供や支援対策についてKJ法2)を用いた演習を通じてナースナビゲーションの研修会を行っている。SDMを伴うナースナビゲーションが必要と想定される事例(補足資料4)を提示し、「5A Framework」(補足資料5)に研修会参加書が各自記入する。その結果をグループ内で検討し、カテゴリー化を行い、ナースナビゲーションの一連の支援対策を作成する。その結果をグループ毎に公表し議論を行うことで、ナースナビゲーションの実践方法を学習する形式をとっている。
我が国の医療では依然パターナリズムの傾向は強く、患者(受診者)へのSDMの重要性について十分な理解が得られていない。SDMの推進には医療者の意識改革のために研究成果の公表などを通して継続的に情報発信をしていく必要がある。また、SDMを担う医師・保健師・看護師のための教育機会の提供として、研修会の開催、リカレント教育、e-learningなども検討されるべきである。また、教育のみならず、SDMにより集積される数多くの疑問点に科学的根拠に基づいた情報提供ができる機会をホームページなどで提供する必要もある。そのためにも、SDMを通じたネットワークを活用しながら、SDM普及のための継続的支援体制が整備されることが望まれる。
- NHS England and NHS improvement. Shared Decision Making Summary guide. 2019. https://www.england.nhs.uk/wp-content/uploads/2019/01/shared-decision-making-summary-guide-v1.pdf
- 川喜田二郎. 発想法 改版-創造性開発のために. 中公新書,中央公論社. 2017