SDM:がん検診への応用-1. がん検診におけるSDMの考え方

SDM:がん検診への応用

近年では、診療だけではなく、がん検診においてもSDMの推進が求められている。がん検診の提供は国や地域の体制により異なり、集団を対象として広く情報を伝えることを目的として、リーフレット、ホームページ、DVDなどの伝達手段が作成されてきた。こうした一方向性の伝達手段だけでなく、SDMは受診の意思決定に伴うコミュケーションである。従って、SDMは従来の情報伝達や受診率対策だけでなく、対象者への公平な受診機会を提供するための新たなコミュケーション方法として期待されつつある。

 

1. がん検診におけるSDMの考え方

臨床現場でのSDMとは異なり、地域や集団を対象とした介入という点から、Informed Decision Making、Informed Choiceといった表現が用いられる場合もある。米国Centers for Disease Control and Prevention(CDC)ガイドラインでは、Informed Decision Makingは集団を対象とした介入とし、臨床現場で用いられるSDMを包括する概念としている1)。近年では、患者(受診者)・医療者間のコミュケーションの用語としてInformed Decision Making よりもSDMが広く用いられている。

USPSTFは、医療者と患者(受診者)との予防や検診・健診にかかわる意思決定プロセスにおいて、以下の4つの要因が必要であるとしている1)。①対象となる疾患のリスクや重症度の理解、②利益・不利益、選択肢、不確実性についての理解、③利益・不利益に対する価値づけ、④患者(受診者)にとって満足のいくレベルで意思決定が行われること。これらを達成することが、医療者と患者(受診者)の両者が参加する、SDMの目指す方向である。また、USPSTFでは検診や予防のためのSDMの目的として、自律性の確保、患者(受診者)・医療者間の信頼関係構築、知識の改善、嗜好・価値観の尊重、健康アウトカムの改善、選択した方法の遵守率改善をあげている2)。しかしながら、SDMの遵守率に関する研究は少なく、健康アウトカムへの寄与は十分な検証がされていない。

文 献
  1. Briss P, Rimer B, Reilley B, Coates RC, Lee NC, Mullen P, Corso P, Hutchinson AB, Hiatt R, Kerner J, George P, White C, Gandhi N, Saraiya M, Breslow R, Isham G, Teutsch SM, Hinman AR, Lawrence R; Task Force on Community Preventive Services. Promoting informed decisions about cancer screening in communities and healthcare systems. Am J Prev Med. 2004;26(1):67-80.
  2. Sheridan SL, Harris RP, Woolf SH; Shared Decision-Making Workgroup of the U.S. Preventive Services Task Force. Shared decision making about screening and chemoprevention. a suggested approach from the U.S. Preventive Services Task Force. Am J Prev Med. 2004;26(1):56-66.