SDM:がん検診への応用
2. DAの活用
DAによる介入の効果を検証した初めてのランダム化比較試験は1996年に米国で発表されている。以来、欧米諸国では多くのランダム化比較試験が実施され、がん検診の受診を決断する際に重要な3つの要因に対するDAの効果が確立されてきた。①がん検診に対する知識、②受診決断における葛藤、③SDMに対する患者(受診者)の捉え方の3因子である。具体的には、DAを使用すると(使用しない場合と比較して)検診に対する知識が増え、参加決断の葛藤が解消され、SDMが良好にできたと感じる人が増加する。
この3因子以外にもがん検診の受診を決断する際に重要かもしれない要素がいくつか検討されている。例えば、決断に至る態度、決断への確信、決断に対する後悔、SDMにおける闊達な議論、決断へのかかわり度合い、不安などである。しかし、これらの要因についてはまだ十分な研究が実施されておらず、一定の結論には至っていない。
DAを用いた受診行動(受診に対する意思や実際の受診)に対する効果についても多くのランダム化比較試験が行われ、概ね結果は一致している。具体的には、DAを使用すると(使用しない場合と比較して)前立腺がん検診と乳がん検診については受診行動(受診意思・実際の受診)が減少し、大腸がん検診では受診行動(受診意思・実際の受診)が増加した。一方、肺がん検診では十分な研究が依然として実施されておらず、一定の結論には至っていない。がん種ごとの受診行動の違いには、個々のがん種に対する検診自体の有効性と不利益に関する科学的根拠の違いも影響する。DAによりSDMが円滑に行われ、個々のがん検診自体の正確な情報が提供され、対象者は検診についての十分な知識を獲得し、葛藤が解消され、おそらく個人の価値観に基づいて適切な行動がなされたと解釈できる。